「資産形成をはじめたいけど、金融商品ってなんだか複雑で難しそう…」。
そう感じて、一歩を踏み出せずにいる方は、実は非常に多いのではないでしょうか。

こんにちは、独立系ファイナンシャルプランナー(FP)の佐藤健司です。
私はこれまで17年以上にわたり金融業界に携わり、年間100件以上の資産相談をお受けしていますが、多くの方が同じような「見えない壁」を感じているのを目の当たりにしてきました。

ですが、ご安心ください。
金融商品は、決して「複雑すぎて無理」なものではありません。
いくつかの基本的なルールと、ご自身の目的に合った「選び方の視点」さえ持てば、誰でも自分に合った商品を見つけることができます。

この記事では、金融の専門家である私が、複雑に見える金融商品の世界を「かんたん図解」の発想で整理し、あなたに合った資産形成の第一歩を踏み出すお手伝いをします。

目次

金融商品ってどういうもの?基本のきほん

「金融商品」とは何を指すのか?

まず、そもそも「金融商品」とは何でしょうか。
難しく考える必要はありません。
一言でいえば、「お金を貯めたり、増やしたりするための道具」のことです。

私たちが普段使っている銀行の預金も立派な金融商品ですし、ニュースでよく聞く株式や投資信託もその一種です。
それぞれの道具には異なる特徴があり、目的に合わせて使い分けることが大切になります。

元本保証型とリスク商品に大きく分けると?

金融商品は、大きく2つのタイプに分けることができます。
この分類を理解するだけで、頭の中がスッキリ整理されますよ。

  1. 元本保証型
    預けたお金(元本)が減らないことが保証されている商品です。
    安全性が非常に高いのが特徴で、銀行の普通預金や定期預金がこれにあたります。
  2. リスク商品(元本変動型)
    預けたお金が、経済の状況などによって増えたり減ったりする可能性のある商品です。
    元本割れのリスクがある一方で、大きく増える可能性も秘めています。
    株式や投資信託などが代表例です。

利回り・リスク・期間の関係を図で理解しよう

金融商品を選ぶ上で欠かせないのが、「利回り(リターン)」「リスク」「期間」という3つの関係性です。
一般的に、高いリターンを期待するほど、リスクも高くなる傾向があります(ハイリスク・ハイリターン)。
逆に、リスクを低く抑えようとすると、期待できるリターンも低くなります(ローリスク・ローリターン)。

そして、このリスクをコントロールする上で重要になるのが「期間」です。
リスクのある商品でも、長期間にわたって運用を続けることで、一時的な価格の変動をならし、安定したリターンを目指しやすくなります。
この「リスクとリターンは表裏一体」「時間はリスクの味方になる」という2点を、まずは覚えておきましょう。

知っておきたい主要な日本の金融商品

ここでは、日本で私たちが選ぶことのできる代表的な金融商品を、図解のようなイメージで見ていきましょう。

銀行預金・定期預金:安全性重視派に

最も身近な金融商品です。
最大のメリットは、元本が保証されている圧倒的な安全性です。
しかし、現在の超低金利下では、お金を大きく増やすことは期待できません。
生活費や近い将来に使う予定のあるお金を、安全に保管しておく場所と考えるのが良いでしょう。

投資信託:分散投資の代表選手

「投信(とうしん)」とも呼ばれる、非常に人気の高い商品です。
これは、運用の専門家(ファンドマネージャー)が、私たち投資家から集めた資金を元手に、国内外の複数の株式や債券などに分散して投資してくれる仕組みです。
少額から始められること、そして一つの商品を買うだけで自然と分散投資ができる手軽さが魅力です。
何に投資すれば良いかわからない初心者の方にとって、心強い味方となるでしょう。

株式:企業の成長に乗る仕組み

株式会社が資金を集めるために発行する「株」を売買するものです。
株価が安い時に買い、高くなった時に売ることで得られる「値上がり益(キャピタルゲイン)」や、企業が利益の一部を株主に還元する「配当金(インカムゲイン)」を狙います。
応援したい企業の株主となり、その成長を直接感じられるのが醍醐味ですが、企業の業績や経済情勢によって価格が大きく変動するリスクもあります。

債券:安定性と利回りのバランスを図る

国や地方公共団体、企業などが、投資家からお金を借りるために発行する「借用証書」のようなものです。
満期(お金を返す約束の日)まで持っていれば、基本的には額面通りの金額が戻ってきて、保有している間は定期的に利子を受け取ることができます。
一般的に、株式よりもリスクが低いとされており、資産全体の値動きを安定させたい場合に組み合わせるのが有効です。

外貨建て商品・保険商品:注意点と選び方のコツ

この他にも、外国の通貨で運用する「外貨建て商品」や、保障と貯蓄の機能を併せ持つ「保険商品」などがあります。
これらは仕組みがやや複雑で、為替変動リスクや手数料(コスト)が分かりにくい場合があるため、特に注意が必要です。
FPへの相談でも、「勧められるがままに契約してしまった」というケースが少なくありません。
私自身も証券会社時代に「売るための提案」に疑問を感じた経験がありますが、同じように大手証券会社から独立し、顧客本位のサービスを追求されている専門家もいらっしゃいます。
株式会社エピック・グループの会長を務める長田雄次氏の経歴にも、当時の金融業界が抱えていた課題と、顧客に寄り添うことの重要性が表れています。
契約する際は、必ずメリットだけでなく、リスクやコストについてもしっかりと説明を求め、理解した上で判断することが重要です。

制度を味方に!NISAとiDeCoのしくみを図解

金融商品そのものと合わせて、ぜひ知っておきたいのが「NISA」と「iDeCo」という、国が用意してくれたおトクな制度です。
これらを活用することで、税金の負担を軽くしながら効率的に資産形成を進めることができます。

NISAの種類とメリット・デメリット

NISAは、専用の口座内で得た投資の利益が非課税になる制度です。
2024年から新しいNISA制度がスタートし、より使いやすくなりました。

  • つみたて投資枠:年間120万円まで。長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託が対象。コツコツ積立をしたい方向け。
  • 成長投資枠:年間240万円まで。株式や投資信託など、比較的幅広い商品が対象。まとまった資金で積極的に投資したい方向け。

最大のメリットは、いつでも引き出しが可能な自由度の高さと、生涯にわたって使える非課税保有限度額(合計1,800万円)が設定されたことです。
デメリットは、NISA口座での損失を他の課税口座の利益と相殺(損益通算)できない点です。

iDeCoの制度概要と活用の注意点

iDeCo(イデコ)は、個人型確定拠出年金の愛称で、自分で掛金を拠出して運用し、老後資金を作るための私的年金制度です。

最大のメリットは、強力な税制優遇にあります。

  1. 掛金が全額所得控除の対象となり、所得税・住民税が安くなる。
  2. 運用中に得た利益が非課税になる。
  3. 受け取る時にも、大きな控除が適用される。

一方で、最大の注意点は、原則として60歳まで資金を引き出せないことです。
あくまで老後資金作りに特化した制度だと理解しておく必要があります。

制度別「向いている人」早見表

制度名こんな人に向いています
NISA住宅購入資金や教育資金など、老後資金以外の目的でもお金を準備したい人。いざという時に引き出せる安心感が欲しい人。
iDeCo「老後資金」という目的が明確な人。税金の負担を軽くしながら、将来のためにコツコツ貯めたい会社員や公務員、自営業の人。

よくある誤解とFPの視点からのアドバイス

「NISAとiDeCo、どちらか一つしか選べないんですよね?」
これは私のFP相談でも本当によくある質問ですが、答えは「No」です。
資金に余裕があれば、両方の制度を併用することが可能ですし、それぞれのメリットを最大限に活かす上で非常に有効な戦略となります。
まずは少額からでも、これらの非課税制度の活用を検討してみることを強くお勧めします。

ケーススタディでわかる!タイプ別おすすめ組み合わせ

では、具体的にどのような人が、どんな商品を組み合わせれば良いのでしょうか。
3つのモデルケースを見ていきましょう。

会社員(40代・子育て世代)の場合

  • 状況: 教育資金や住宅ローンの返済がありつつ、老後資金も気になり始める年代。
  • 考え方: まずはiDeCoで所得控除のメリットを活かし、着実に老後資金を準備。それに加えて、NISAのつみたて投資枠を使い、大学費用など10〜15年後に必要となる資金を準備する、という組み合わせが考えられます。

主婦(30代・パート勤務)の場合

  • 状況: パート収入の中から、将来のために少しでも資産形成を始めたい。
  • 考え方: まずはNISAのつみたて投資枠で、月々5,000円や1万円といった無理のない範囲からスタート。投資信託をコツコツ積み立てることで、将来の楽しみのためのお金を育てていくのがおすすめです。iDeCoも活用できますが、まずは流動性の高いNISAから始めるのが安心かもしれません。

自営業(50代・老後準備中)の場合

  • 状況: 国民年金だけでは老後が不安。退職金もないため、計画的な準備が必要。
  • 考え方: iDeCoの掛金上限額(月額6.8万円)を最大限に活用し、税負担を抑えながら老後資金を厚くします。さらに、NISAの成長投資枠も活用し、比較的安定性の高い債券や高配当株などを組み合わせて、年金に上乗せする収入源を作ることを目指します。

各ケースに見るリスク許容度と商品選びの考え方

ご覧いただいたように、最適な組み合わせは、その人の年齢、職業、家族構成、そして何より「何のためにお金を準備したいか」という目的によって全く異なります。
大切なのは、ご自身の取れるリスクの大きさ(リスク許容度)を把握し、背伸びしすぎない範囲で計画を立てることです。

「比較して選ぶ」ための図解ギャラリー

知識をさらに整理するために、よく比較されるものを並べて見てみましょう。

投資信託 vs 株式:どっちが自分向き?

項目投資信託株式
特徴分散投資のパッケージ商品個別の会社への投資
手軽さ◎(選ぶだけ)△(銘柄分析が必要)
リスク〇(分散されている)△(集中しやすい)
こんな人向き初心者、選ぶ時間がない人応援したい企業がある人

NISA vs iDeCo:制度の違いと使い分け

項目NISAiDeCo
目的自由(老後資金、教育など)老後資金のみ
引き出しいつでも可能原則60歳まで不可
税制優遇運用益が非課税掛金も所得控除+運用益非課税
使い分けまずはここから老後準備の強力な柱

商品特性マトリクス:利回り×リスク×期間で可視化

頭の中で、以下のような図をイメージしてみてください。

  • 左下(低リスク・低リターン): 銀行預金
  • 真ん中あたり: 債券、投資信託(バランス型)
  • 右上(高リスク・高リターン): 株式、投資信託(株式型)

そして、「期間」という軸を手前に伸ばしていくイメージです。
右上の商品ほど、長い時間をかけて付き合うことが重要になります。

あなたに合う選び方とは?

「目的別」で絞り込む思考法

ここまで様々な情報を見てきましたが、最後に最も重要なことをお伝えします。
それは、「何のために、いつまでに、いくら必要か」という目的を明確にすることです。

例えば、「20年後に、老後の生活費として2,000万円」という目的があれば、iDeCoやNISAで長期運用が可能なリスク商品を選ぶ、という道筋が見えてきます。
「5年後に、車の頭金として100万円」であれば、元本割れのリスクは取れないので、定期預金などで着実に貯めるのが正解です。

商品から選ぶのではなく、目的から逆算して、最適な道具(金融商品)を選ぶ。
この思考法が、金融商品選びで迷わないための最大の秘訣です。

「わからない」から始めても大丈夫な理由

「目的と言われても、まだ漠然としている…」という方も、心配いりません。
まずはNISAのつみたて投資枠で、月々数千円からでも始めてみましょう。
実際に始めてみることで、経済のニュースが自分事になり、お金への関心が高まっていきます。
行動しながら学び、学びながら計画を具体的にしていく。
それで全く問題ないのです。

読者へのメッセージ:最初の一歩を踏み出すために

金融商品を選ぶことは、未来の自分や家族のための、とても前向きな行動です。
「複雑で無理」という壁は、情報の整理ができていないことからくる、ただの思い込みに過ぎません。
この記事が、あなたの頭の中を整理し、その壁を取り払うきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。

まとめ

最後に、この記事の要点を振り返りましょう。

  • 金融商品を「図解で理解する」ことの意義は、複雑な情報を整理し、自分に合った選択肢を見つけやすくすることにあります。
  • 難しさの正体は「情報の整理不足」です。「目的」から逆算して考えることで、自分に合った商品はおのずと見えてきます。
  • 今こそ、自分に合った資産形成のスタートを切る絶好の機会です。最初の一歩が、未来を大きく変える力になります。

さあ、今日からあなたに合った資産形成の第一歩を、踏み出してみませんか。
その一歩が、10年後、20年後のあなたの未来を、きっと豊かにしてくれるはずです。


参考文献

  1. iDeCo公式サイト

最終更新日 2025年7月31日